予約応答率20%→50%へ改善、Web予約導入で電話分散と業務効率化を実現
「2006年の開院当時、予約変更の業務がこんなに大変になるとは思っていませんでした」
そう語るのは、関西医科大学附属病院(大阪府枚方市)の川江寛信氏(事務部・がんセンター 次長)。同院は46の診療科と797床(2025年2月時点)を有する大規模な急性期病院で、北河内地区唯一の特定機能病院として地域医療の中心を担っています。
事務次長として医事業務を統括する川江氏が強調するのは、予約変更業務の負担です。その課題は大きく2つに分けられます。
鳴りやまない予約電話
同院には高度な医療を求める多くの患者が訪れます。
それに伴い、予約変更の電話が1日あたり300〜400件、連休前後は1,000件に達することも。コロナ禍には、1日2,000件に上った日もありました。
対応にあたるのは、約5人のオペレーター。特に繁忙期には電話の応答率が20%台にとどまる日もあり、対応が追いつかない状態(いわゆる「あふれ呼」)が常態化していました。
「電話は一日中鳴りっぱなしです。さらに、患者さんからのお電話に対応しきれないことへのフラストレーションも、スタッフにはあったと思います。患者さんのためにも、なんとか予約電話を分散したいという思いがありました」
複雑な予約調整業務
もうひとつの課題は、予約変更が単なるキャンセルでは済まないこと。
「単に予約を取り消すだけなら簡単ですが、放射線検査や採血などの付随する予約も一緒に調整が必要です。さらに、医師に変更の可否を確認し、診療科ごとのルールも踏まえて対応する必要があります」
この作業は多くの診療科に共通しており、手順をまとめたマニュアルは“ジャンプ2冊分”の厚さに及ぶそうです。
「予約変更は習熟が必要な“職人技”で、新人にはまずキャンセルなどの単純業務から始めてもらっています。習得には相応の時間がかかります」
業務を簡素化しようとしたこともありましたが、診療ニーズの多様化により複雑さは元に戻ってしまうとのこと。
「急性期病院では、軽症の方は地域のかかりつけ医へ。残る患者さんは重症の方も多いため、予約変更にも医師との緊密な調整が欠かせません」
結果として、量(電話件数)と質(調整の複雑さ)という二重の負荷が現場を圧迫していました。
現状把握と対策の検討
川江氏たちは、予約電話の負荷を分散するため、まず現状把握から着手します。
NTTコミュニケーションズの「ナビダイヤル」を導入し、受電数や応答率のデータを可視化。すると、1日1,000件以上の電話が殺到し、応答率が2割未満の日もあるという事実に直面します。
「ナビダイヤルのレポート機能で、予約変更電話の対応状況を数値で把握したときは愕然としました。1日あたり約1,000件もの電話がかかってきた日もあり、オペレーターの応答率も2割に満たない状況だったのです」
この結果を受けて、・電話受付時間の拡大・一部診療科への直通転送の仕組み・Web予約の導入検討といった複数の対策を検討。特に重視していたのは、「24時間いつでも予約変更できる」仕組みの実現でした。
「予約センターの営業時間外や、昼休み・連休明けの朝など、電話が繋がりにくいタイミングが集中していて。患者さんの利便性を高めることは最優先事項でした」
しかし、既存の他院事例で導入されていた「メールでの予約変更受付」は、かえって業務が煩雑になり、患者からの評判も芳しくなかったという情報もあり、慎重な判断が求められました。
大規模病院に適したWeb予約の形とは
一般的なWeb予約では「患者が空き枠を選択して即時確定」という方式が想定されますが、同院のように多数の診療科を抱え、それぞれに異なる運用ルールがある病院では以下の課題が発生します:
- 各診療科にWeb用の予約枠を設ける必要がある
- 調整ルールが科ごとに違うため、画一的な運用が難しい
- 各診療科の予約状況を常に更新し続ける手間がかかる
そのため、Web予約制によるメリットは享受しつつ、従来から院内で行っていた予約調整フローは変えずに運用することが求められていました。
「患者さんから希望の予約日時をWebで受け付けた後は、院内のスタッフが確定日時を調整し、しっかり回答する。こういったシステムを探していました」
Web予約方式と、従来の調整方法(電話)との違い
「やくばと病院予約」の検討を開始
「やくばと病院予約」の担当者と初めて会った際、川江氏は「本当にうちの課題を理解してくれている」と感じたといいます。
当時の「やくばと病院予約」には予約変更機能が未実装でしたが、川江氏たちの要望を受けて新機能の開発がスタート。
「初回の打ち合わせだけで、我々が求めている機能の6〜7割は共有できたと思います。『このシステムはうまくいくだろう』という手応えがありました」
最終的に同院向けに開発された主な機能は以下の通りです:
- 患者が希望日時をWeb入力 → 院内で確認・調整 → 確定日時をメール返信
- メールの自動送信および既読確認機能
- 予約情報・ステータスの一元管理機能
「既読確認機能が特に助かりました。メールが患者さんに届いているかが分かることで、確認の手間が減りました。その他の機能もすべて、実際の業務を理解したうえで作っていただいたと感じます」
Web予約変更の申込ページ
予約申込みの3ステップ
業務の平準化と応答率の改善
導入の効果は、現場にも確実に表れました。
- 応答率は従来の2〜3割から5割に改善
- 電話のリアルタイム対応が減り、業務の平準化が進行
- 医師や看護師への確認も、余裕のあるタイミングで実施可能に
「朝イチなどの混雑時間帯を避けて、落ち着いて調整業務に取りかかれるようになりました。新人スタッフも段階的に業務に慣れていけるので、教育の面でも助かっています」
患者にとってのメリットも大きいといいます。
「夜間や休日でもWebから予約変更を入力でき、当院からはメールで確定日時を送る。仕事中に電話ができなかった方からも好評です」
実際にご自身の息子さんが分院の香里病院で予約変更をした際も、Webでスムーズに手続きできたと好評だったそうです。
最後に:Web予約は現場と患者に余白を生む
「中規模から大規模の病院では、予約電話に関する何らかの課題を必ず抱えているはずです。Web予約をうまく活用すれば、電話業務の負担を軽減しつつ、患者さんとスタッフ双方の時間に“余白”を生み出すことができます。検討する価値は非常に高いと思います」
やくばと病院予約について
「やくばと病院予約」は、以下の機能を備えた病院向け予約システムです。
詳細のご確認や資料請求、お問い合わせは、以下のサービスページからお願いいたします。